自己資本比率がマイナスとは?
[自己資本比率とは?]
自己資本比率とは、総資本に対する自己資本の割合のことを指します。例えば、総資本が4,000万円、自己資本が1,000万円であれば、自己資本比率は25%となります。
自己資本比率を計算式で表すと以下のようになります。
自己資本比率=自己資本÷総資本
このような式で自己資本比率を求めることができます。自己資本比率は企業の安全性を表す指標として知られており、自己資本比率の場合は高いほど安全性が高いということになります。
なぜ自己資本比率が高いと安全かといえば、自己資本比率が高いという事は負債の割合が低いことを表すためです。自己資本比率を求める際の分母である「総資本」は「負債」と「自己資本」の合計であり、逆に言えば総資本から自己資本を引いた部分が負債です。つまり、自己資本比率が25%であれば、総資本に占める負債の割合(負債比率といいます)は75%となります。
「自己資本比率が低いという事は、負債の割合が大きい状態であることを意味している」というようにイメージして頂ければと思います。
[自己資本比率の目安]
では、自己資本比率の目安について考えてみましょう。少し古い調査とはなりますが、平成10年に経済産業省が行った調査「商工業実態基本調査」によれば、業界ごとの大企業の自己資本比率の平均は以下の通りです。
・製造業:およそ40%
・卸売業:およそ23%
・小売業:およそ24%
業界ごとに平均が大きく異なるという点よりも、とくかく自己資本比率が高いことに驚いた方も多いのではないでしょうか。
御自分が経営されている会社や店舗・事業の自己資本比率と比べてみてください。上記の平均に達しているどころか、自己資本比率がマイナスになっているというケースも多いのではないかと思います。
しかし、それもそのはず。自己資本比率は企業規模が大きいほど高い値となる特徴があるのです。
中小規模の事業者の場合、自己資本比率の平均は上記よりだいぶ低くなってきます。データを確認してみましょう。確認するデータは、日本政策金融公庫の「中小企業の経営等に関する調査(2018年,2019年)」です。この調査の結果は以下の通りです。
○卸売業
・4人以下: およそ-41.%
・5〜9人:およそ-10%
・10〜19人:およそ3%
・20〜49人:およそ11%
○小売業
・4人以下: およそ-42%
・5〜9人:およそ-15%
・10〜19人:およそ-3%
・20〜49人:およそ0%
○一般飲食店
・4人以下: およそ-72%
・5〜9人:およそ-26%
・10〜19人:およそ-6%
・20〜49人:およそ-2%
このように、先ほどの大企業の自己資本の平均値と比べだいぶ低い値という印象になるかと思います。しかし、中小規模の事業者はある程度のリスクを背負って経営するというのは前提でもあり、自己資本比率が低いからと言って即倒産するわけでもありません。しかし、自己資本比率がマイナスであるという場合、不安になる経営者も多いのではないでしょうか。
最後に、自己資本比率がマイナスという状態について考えたいと思います。
[自己資本比率がマイナスとは]
自己資本比率がマイナスというのは、自己資本がマイナスの金額である状態です。ここで、自己資本がマイナスとなる最大の要素は、繰越利益剰余金がマイナスであるということです。
繰越利益剰余金とは、会社や事業が生み出した今までの利益の累計額です。損益計算書の一番下に記載される「当期純利益」つまり単年度の会社や事業の利益を、毎年積み重ねていった金額が繰越利益剰余金なのです。つまり、自己資本がマイナスというのは、会社が赤字体質の状態であるという事を示しているのです。
もちろん、短期的に自己資本比率がマイナス(=繰越利益剰余金がマイナス)であるというのは問題ではありません。店舗を開業したばかりだとか、スタートアップの企業は利益が小さくその代わり出ていくお金が多いので、自己資本比率も低くなりがちです。しかし、自己資本比率がマイナスの状態が続けば、従業員の方への人件費が払えなくなったり、銀行からの融資が難しくなったりと、事業継続が困難となる可能性が十分にあります。
そして、財務分析でわかるのはここまでです。「自己資本比率が低いorマイナスなので問題だ」というところまでは分かっても、ここから先は詳細な分析による原因追及や課題抽出、具体的改善の実行が必要となります。自社の自己資本比率を高め、強固な財務基盤を作り事業継続をしていくためにも、お悩みの際はぜひ我々専門家にご依頼頂ければと思います。
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